ドラマと紅茶

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映画「紙の月」感想 面白かったけどどこか奇妙さを感じた

 2014年に公開された宮沢りえさん主演の映画です。

こちら角田光代さん原作のサスペンス小説で原田知世さんが主演でドラマ化もされて

いたそうで、ドラマの方が原作に忠実なストーリーらしいです。

機会があったらドラマの方も観てみたいと思った作品でした。

 

ではネタバレありの感想です。未見の方はご注意下さいませ。

紙の月

紙の月

  • 発売日: 2015/06/02
  • メディア: Prime Video
 

 簡単なあらすじです。

既にジャケットにも書いてありますが「最も美しい横領犯」と あるのでネタバレも

何もないような気がしましたが、それでけではなく何故や結末にも触れますのでも

う少し詳しいあらすじを。

1994年のバブル崩壊後を舞台に銀行の契約社員として営業を担当し顧客からも信頼の

厚いアラフォー主婦の梨花、ある日とある顧客の孫の光太という青年と出会い、逢瀬を

重ねていく内に金銭感覚が麻痺していき、とうとう顧客のお金に手をつけてしまい

取り返しのつかない金額になってしまうのだが…というお話。

 

以下から思いっきりネタバレが入ります。結末についても触れます。

 

先ず、宮沢りえさんが本当に美しい。映画とは関係ありませんが彼女ももう少しふっく

らされたらもっと綺麗なんじゃないかと思います。

元々が美しいのだけど映画が始まって最初は、家のローンを早く返済したいと考え節約

しているらしいことから自分にもお金をかけていないようなので地味で冴えない感じは

出てました。が、光太という若い男性と出会い不倫しているだけでなく、犯罪にも手を

染めているのに話が進むに連れてどんどん透明感と綺麗さが増していくから凄い。

「恋する女は綺麗さ~」って歌がありますが、あれ、本当なんですよね。

私も恋をして見違えるほど綺麗になっている友人を目の当たりにしたことがある

のでやっぱりいくつになっても恋する女性は美しくなるのは分かりますが、それも

見事に演じられていましたし、演技も自然だし変わっていく様もしっかり表現されて

いて素晴らしかったと思います。

 

ただ私はこの宮沢りえさん演じる梨花にとても違和感がありました。宮沢りえさんの

演技ではなく、この映画の主人公の梨花という人間に違和感がありました。

それとストーリーについても少し言いたいことがありますので、先にストーリーに

ついて言わせてもらいます。

梨花の夫役を田辺誠一さんが演じておりますが、映画上では亭主関白でも束縛するでも

なく、それどころが優しい夫で、ルックスも恰好いいし海外出張のお土産でカルティエ

の腕時計を買ってきてくれる夫、私からするととても良い夫だと思います。少なくとも

愛されているように思います。なので不倫する動機が少し薄いというか説得力がない

ように感じました。見た目も年相応で禿げてたりメタボな体型で嫌味ばっかり言う嫌な

夫の方が不倫にも同情が出来るのでそういうキャラの夫の方がよかったのではないかと

思いました。

 

ですが年齢的にもアラフォー女性だったら多くの人が感じる「もう女として見られない

お年頃になったのかも」という危機感のようなものを抱くので、自分より明らかに

年配というか高齢の男性から口説かれることはあっても若い、それも大学生の

光太から口説かれたら「私もまだイケる!」と嬉しくなるのは分かりますが、梨花

決して光太に心底のめり込んでいるように見えない。なので光太に貢ぐために横領を

したとも思えなかった。それはあくまできっかけでしかなかったような印象でした。

後述しますが、彼女が「与えて感謝される喜び」を得られる相手ならある意味誰でも

よかったのではないかと。

恋愛をしている自分に恋してる、みたいな感じにも見えたので。

あと、どうでもいい突っ込みとして、光太と一緒に歩いているところに光太の

サークル仲間の女の子と出くわした時に女子大生の方が「お姉さんですか?」と梨花

尋ねると「姉です」と答えた梨花。私には姉弟というより親子にしか見えなかった。

 

では、私が始終梨花という人物に違和感を持った理由についてですがストーリーに

ついて上述した事とも関係しているのですが、ミッションスクールに通っていた彼女は

学校で水害で苦しむ国の子供たちへの募金をし、写真付きで返事をもらったことに

感銘をうけたのだが、学校からは「自分が出来る範囲で」としか言ってはいないし、

クラスメイト達も次第に募金はしなくなっていき、それでも日に日に他のクラスに

比べて自分のクラスの募金金額が少なくなってくると父親のお財布からお金を抜き取り

募金をし、学校でもそれを問題視して募金活動を廃止することになるのだが彼女はそれ

について罪悪感がない。

親のお金を盗んだことに対して「悪いことをしている」という感覚は持ち合わせていた

のかもしれないけれど、それよりも自分が募金をして人に与えて感謝されることでしか

幸せを感じられない、まるでボタンの掛け違いをしたままの服を着ていても「それが私

の揺るぎない正義」という歪んだ感覚をこの頃から持ち合わせてそのまま大人になって

しまったが故に、光太との不倫も自分がお金を横領することのきっかけではなかったの

ではないか?と思えてならなかった。何故なら光太とのこと長くは続かないと梨花

分かってはいたし、梨花からすると光太には恋愛感情はあるものの、終盤でのより子と

のやり取りの際にも「すべて偽物だから」と梨花自身も言っていることから純粋な愛情

というよりも与えるべき存在であることの方が重要だったように思えたからだ。    

 

つまり、梨花という人物は横領(父親のお財布からお金を抜き取ったことも含め)は

「悪い事」と分かっていても「人に与えて感謝されること」の方が彼女にとっては

何より重要だという感覚や信念を抱いていることが何かが欠落している人間として

しか私には映らなくなってしまったことが違和感を持った最大の理由なのでは

ないかと思いました。

 

その証拠ではないですけど不正がバレても悪びれた様子もないどころが、会議室の窓

ガラスを割って逃げ出しますからね、通常のメンタルの持ち主ではないことがそこから

も窺えますが、その時に小林聡美さん演じる彼女の不正に気付いた隅より子というお局

的存在とのやり取りもとても興味深く、お金を使い込み好きなことをした梨花とは対照

的により子は社会や会社のルールに則って生きてきたタイプであるのに、梨花に彼女が

しでかした事を咎めながらも好きなことをした彼女を羨ましくも思ったりしている部分

もあったので根本的にはどこか同じタイプだったのではないかと推測しました。元々

二人とも社会という同じの枠に縛られて、それを犯罪という方法で解き自由を得た、

またはつかの間でも味わった梨花とこの先も縛られたままで何もないままのより子、

一つの同じ世界にいながら違う選択をした各々の人生というだけなのではないか、と。

最初に良い夫がいるのに…と述べましたが、唯一でもあり最大でもある彼の欠点は

梨花に「感謝する」タイプではなかったからで、もし彼女の夫が彼女のしたことに

対して常に素直に感謝を口にしていたら彼女は光太とも関係を持たなかったかも

しれないし、もし好奇心や女性としての危機感か不倫をしたとしても横領はしな

かったのではないか、とも思いました。

 

それと原作者の角田光代さんが「お金を介在してしか恋愛が出来なかったという

能動的な女性を描きたかった」と仰っていたので、その部分をこの映画ではしっかり

描かれていたと思いますし(その根拠は私には梨花が恋愛そのものより「与えること

が大事でそれが幸せ」だとしか見えないと思ったこと)、原作やドラマと違いこの映画

監督の「横領に手を染めていくプロセスをしっかり描きたい」といったことも表現され

ていたと思います。

 

最終的に海外へ逃亡した梨花ですが、映画では捕まるのか捕まらないのか微妙な描かれ

方で終わりました。ここも私としてはちょっと不満でした。

いつかは捕まったとしても、そんなニュアンスを残してはいたと思いますけど、

しっかり捕まってくれないと、こういう犯罪を犯しても逃げ切れることが可能だと

したらやり切れない。。。見つからなかったらやったもん勝ちみたいな犯罪として

描かれると真面目に生きてるのも何だかバカバカしいと思えてしまいそうで。

だからといって犯罪を肯定する理由にもなりませんし出来ませんが。

宮沢りえさんの演技にも魅せられましたし総じて面白い映画だと思いましたが

「正直者が馬鹿を見る」世界になって欲しくない、そう思えた映画でした。



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それではまた~(^^)/