ドラマと紅茶

ご覧頂きありがとうございます!映画と海外ドラマの簡単な感想と日々の出来事について少し 流行りには疎いです

映画「楽園」感想 日本の悪しき習慣の典型

2019年に公開された先日の「友罪」に続いてまたまた瀬々敬久監督の作品です。

原作は吉田修一さんの「犯罪小説集」から二つの短編小説が絡み合っていく

サスペンスドラマで、主演は綾野剛さん、他に佐藤浩市さん、杉咲花さん等、また

映画「64」で観た面子+αな出演者さん達でした。

 

何だか海外ドラマの「アメリカン・ホラー・ストーリー」みたいな感じがしてきた。

毎回同じキャストで異なるドラマを作製しているような。。。

まぁよくあることですよね。

 

こちらも小説はフィクションですが実際にあった事件をベースに描かれています。

ネタバレありの感想です!

 

楽園

楽園

  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: Prime Video
 

 あらすじの前に原作のベースとなった事件について少し。

 【青田Y字路】

・北関東連続幼女誘拐殺人事件

1979年~1996年の間に群馬県と栃木県の県境で起こった4件の女児誘拐殺人事件と

1件の女児連れ去り事件。冤罪となった足利事件も含まれていて、私の記憶が確かなら

日本で初めてDNA鑑定が用いられた事件で、地元では真犯人は「ルパン似の男」と

言われていたといつだったかテレビで観たので記憶にある方もいるかと思います。

全ての事件が未解決で犯人も特定されないまま時効を迎えてしまった事件。

 

万屋善次郎】

・2013年に山口県の集落で起きた連続殺人、放火事件。加害者(当時63歳)が

限界集落で高齢者5人を殺害し放火した事件。

 

簡単なあらすじは、上述の事件が交差して描かれていきます。

8歳の時に母親と一緒に東南アジアのどこかの国(フィリピンと言っていたような気が

したが定かではないです)から来た外国人の豪士(綾野剛)という青年はヤ〇ザに

因縁をつけられながら母親と偽物を扱うリサイクル店を営みながら生活している。

ある日田園が広がるY字路で少女が行方不明になる。集落総出で捜索する(豪士も

参加していた)も見つかったのは彼女の赤いランドセルだけだった。途中まで一緒に

下校していた紡(杉咲花)は失踪した少女の「一緒に家で遊ぼう」という誘いを

断っていなかったら、とずっと自分を責めている。それから12年後また少女の

行方不明事件が発生。村人たちはその時間ににアリバイがあった豪士を犯人だと決め

つけ彼を追い込んでいく。

 

最初の少女行方不明事件の1年後、妻を病気で亡くした善次郎(佐藤浩市)がUターンで

村に戻り、犬と一緒に暮らしていた。限界集落では若い者としてご近所さんの手伝いを

したり頼られている。ある日、村で村おこしをしようという話が持ち上がり、「役所と

のやり取りは色々と面倒だから」と善次郎が自ら役所へ赴いたことが気に入らない長老

達から村八分にされ、精神が蝕まれていく…というお話。

 

 

以下ネタバレありの感想になりますのでご注意を!

 

 

映画「ホムンクルス」よりこちらの綾野剛さんの演技の方が光ってます。体も精神的

にもひ弱で、歩き方や話し方の隅々まで豪士という青年を演じられていて、この映画

では少女を誘拐した犯人とははっきりとは描かれていません。

この映画も観た方にお任せ的な終わり方をしていますが、私は最初の犯人は豪士だと思

っています。というのも、紡が最後の目撃者として話を聞かれている時に豪士が少女の

後を追って行ったところ、現場付近に豪士の所有していた車と似た車が止まっていたこ

とを思い出していた。これは紡が自責の念から出た妄想だとの意見もありますが、当時

豪士が疑われた際に彼の母親が事情聴取で「豪士と一緒にテレビを観ていた」と嘘を

つき、それを聞いた豪士が気持ちの悪い笑みを浮かべるシーンがあるので、それを考

えると当時から既に村人たちから疎外されていた彼は行方不明になった少女から優しく

声を掛けられその後を追ったと見るのが自然かなと。でなければ彼の母親が嘘の

アリバイを言う意味がない。そして12年後に起こった事件は豪士のアリバイを証明

してくれる人物がいるので明らかに濡れ衣なのですが、12年前に犠牲になった少女の

祖父(柄本明)が彼だと追い詰めそれに便乗した村人たちに責められて逃げた食堂で

自ら灯油を浴びライターに火をつけてしまう…という悲惨な結果で終わりますが、

これ…どうなんでしょうね…

映画では12年前の事件の犯人が豪士だという証拠は何一つないのでそこをどう解釈する

かによって意見や感想も違ってくるかと思います。

憶測だけで犯人扱いをしてはいけない、ということも伝わってきますが意味深な描写も

あるので何とも言えませんが初見の私の感想は上記の通りです。

 

そして何と言ってもこの映画の佐藤浩市さんの狂気の沙汰の演技が圧巻でした。

この映画では善次郎は何も悪いことはしていません。村人が80代90代と高齢者ばかり

なので気を利かせて面倒なことは自分がとお役所に話をしに行っただけなのにそれが

気に食わないと村八分どころか村十分にされる…

もう老い先短い老人が善次郎というスケープゴートがいないと成り立たないような限界

集落は滅びてしまえ、これこそが老害だよ、と思ってしまうほど理不尽で…

善次郎が壊れてマネキンに亡くなった妻の服を着させて畑に並べたり、最後は妻の亡骸

を埋めた土を食べ(佐藤浩市さんは振りではなく実際に土を食べていたと思います)、

近隣の老人達を殺害後放火をし、最後に自らを刺してしまうという本当に鬼気迫る演技

でしたが、救急車で運ばれるところで映画が終わるので正確には亡くなったかどうかは

分かりませんが恐らく亡くなったような感じに私には見えました。

実際の事件の方は逮捕されたそうですが。

 

どちらにしろ日本の闇というか日本人の最も嫌な、陰湿でよそ者を排除しようと

する、それが同じ日本人だろうと外国人だろうと「悪いのはこいつ」とターゲットを

一人決めたらその他全員が異口同音にターゲットの人格を壊すまで攻撃をする部分が

同じ日本人として悲しくもありおぞましさを感じる映画でした。

いい大人がですよ?人生を達観していてもいい年代の70代後半や80、90代の老人達が

こんなことしてるんだから子供のいじめだってなくなるわけない、子供に「いじめは

ダメ、差別はダメ」なんてよく言えるよなー、口では綺麗事並べても子供は親の背中

見て育つんだよ、と日本人であることが嫌になりそうな気分にさえなりました。

他の国でも差別はありますが肌の色や宗教の違い等の差別とは違い村八分はまた少し

異質な気もします。他の国でもこれと似た差別はあるのかもしれませんが。

 

日本の自殺率が高いのもこういうことが多少は関係していて、子供だけでなく大人に

なっても続いているんだなと思ってしまう、というかそういう部分は実はあって、

子供時代は「学校」という狭いコミュニティで、過労で自殺をしてしまった、しまう

人もきっと「会社」というコミュニティで、専業主婦だって「ママ友」とかいう変な

コミュニティもあって、それらどのコミュニティにも必ず"いじめ"はある。そこから

逃れられず周りは口では心配していても誰も本気で助けてあげようとしなかったり、

苦労して入社した会社を辞めたら両親や家族に申し訳ないとか、責任感からか辞める

とか逃げるいう選択をする前に楽になりたくなってしまうような周りからの圧力も

大きいんだろうなーと何となくだけど思います。

多分、追い詰められた経験がある人にしか分からないことだとも思いますが‥。

私の地元でも山間部に近い村に新築で家を建て引っ越したがご近所さんからのいわれ

のない嫌がらせを受け、耐えられなくなり結局市街地にまた引っ越したという知人が

実際にいます。本当にそんなことが‥と田舎の集落は闇が深いと知りました。

 

スケープゴートがいないと成り立たない限界集落は全滅したら世代が変わってこの

ような排除や問題も少しはなくなるのかな…?

確かに世間では誰かが「悪者」であることで結束が強まったり、犯罪被害者のご遺族の

方の心の行き場になり少し楽になれたりすることもあるのかもしれない。

それでも罪のない人を罪人にするようなやり方はやめようよ。。。と思う私も綺麗事を

言っているだけなのだろうか…?

この映画の村人たちのような人には私はならないように心掛けようと思いました。

 

あ、杉咲花さんが演じた紡さんと村上虹郎さんが演じた紡を想う広呂は癌を患うけど

5年後生存率が50%まで寛解したお話は悪くはなかったけれど、別に描かれなくて

もよかったような気もしました。私はこの二人については全く述べずに書きましたし。

でもこの二人の関係がこの映画で唯一ホッと出来るエピソードではあったと思います。

 

この映画を観た方、12年前の犯人は誰だと思いますか?

 

 


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それではまた~(^^)/