映画「三度目の殺人」感想 モヤモヤするのが好きな人向けかも
2017年に公開された福山雅治さん主演の是枝裕和監督の法廷映画です。
福山さんはイケメンの代表みたいな方ですが演技に関してはあまり上手くないなーと
いう印象でしたが久々に観た福山さんは「実に面白い」の頃と比べると活舌も演技も
良くなっていてよかったです。
ではネタバレありの感想を。
まずは簡単なあらすじを。
真実は二の次で勝つことだけを優先する弁護士の重盛(福山雅治)は、同僚の摂津
(吉田鋼太郎)が担当していた殺人の前科がある三隅(役所広司)の供述が二転三転
するので助けを求められ引き受けることに。彼は先日一人の食品会社社長の山中を
撲殺し、焼き殺した容疑者だった。減刑を勝ち取るために三隅と面会するがまた供述
が二転三転する。事件を調べていくうちに食品会社に勤めていた三隅が会社の社長の妻
の美津江(斉藤由貴)から事件の前に50万円を受け取っていたことから保険金詐欺を
疑われるのだが、美津江の娘の咲江(広瀬すず)から三隅のために証言をしたいと
申し出があった。彼女は実父から性的虐待を受けており、その相談を三隅にしていた
のだった…というお話.
まず疑問に思うのは動機。三隅は山中を殺す前にも強盗殺人を犯している。これは
強盗という動機があるけど、山中の殺害については「やった」「やってない」等
供述が二転三転していて動機が全く分からない。咲江が証言することになると「自分
が殺しました」と殺人を認めるのだが、ここで考えらえることが3つほど出てくる。
①三隅が虐待を受けている咲江のために彼女の父親を殺害した
②実は父親を殺害したのは咲江で三隅がかばった
③三隅と咲江の共犯だったが三隅が罪を被った
等が映像でも想像出来るような構成になっている。でもどれもはっきりしない。
重盛は「真実は誰にも分からないのだからメリットのある結果を出す。理解もする
必要はない」がモットーで自分の部下にも「容疑者の理解など無用」などと言い
放っている。しかし30年前に三隅が犯した殺人事件の裁判で裁判長を務めていたのは
彼の父親で、彼は「やつは獣のような人間で中身のない空っぽの器だ」と言っている。
それなのに最初の事件から30年後に重盛の父親に三隅から自分の娘と遊んだこと等が
綴られたハガキが送られてきているので益々分からなくなるのだが、彼が途中から
三隅に対して感情的に「本当のことを話してくれよっ!」と言ったりするので、三隅
と関わるうちに重盛も変わってきたのかもしれないけど「真実はどうでもいい」的な
モットーはどこへ行った?ブレてない?と思った。観ている方には三隅の人物像は
何となく分かるように見せておいて、というか真実も知りたいけれど、重盛のような
人物にはそこまで深追いさせない方がキャラがブレなくてよかったんじゃないかと
思った。
そしてタイトルの「三度目の殺人」だけど、まず三隅の一度目は強盗殺人、二度目が
この山中の殺人、三度目は自分が「自らの意志と関係なく、法で裁かれ死刑で殺される
こと」が三度目の殺人ということなんだろうと解釈した。劇中の台詞にもある「裁判官
検察官、弁護士は司法という同じ船に乗りゴールを目指しているのに肝心な真実が何か
分からないままでも裁判によって命が決まる」ということや、三隅が重盛の父に送った
ハガキにも「裁判長だけが人の命を自由に出来る」とも言っているということからも
それまでまるでロボットのように弁護士の言う通りにしていた三隅が気持ちが悪かった
のだが、「真実が不明なままでも人によって命の選別が出来る」ということを実践した
かったのかと思えたし、ロボット的に弁護士に言われるまま供述が二転三転してきた
のも何となく理解が出来たように感じた。
しかし、最後まで山中を殺したのが三隅なのか咲江なのかがはっきりしない。
是枝監督は明言しているそうだが、そこは触れずに観た方が感じたままでいいのでは
ないかと思います。でも真実が分からないのはやっぱりモヤモヤするーーーーー(笑)
それではまた~(^^)/